水口 剛

「幸福な監視国家・中国」  梶谷懐・高口康太(著)NHK出版

2020年6月30日、中国は香港国家安全維持法を制定しました。翌7月1日、香港では「香港独立」という旗を持っていただけで、男性が逮捕されたと報じられました。ただ旗を持っているだけで逮捕されるって、さすがにそれはひどいのではと、日本にいると思います。では、中国本土の人はどう思っているのだろうと考えながら、この本を読んでほしいと思うのです。きっと中国本土の普通の庶民は、香港で起きている本当のことを知らないのではないか。そう思い至ったとき、単に「監視」されているだけでなく、「操作」されている可能性に気づきます。そして本当に上手く操作されると本人は気づかない。・・・日本にいる私たちはどうなのでしょうか。

「資本主義と闘った男 - 宇沢弘文と経済学の世界」  佐々木実(著)講談社

今、アメリカやヨーロッパで企業のPurpose(目的/存在意義)を問い直す議論が広がっています。かつて株主資本主義を決定づけたフリードマンの呪縛から逃れようと世界がもがいているのです。そのフリードマンと同時代を生き、同じシカゴ大学で強い光を放った宇沢弘文の軌跡を辿ったのが本書です。「社会的共通資本」という概念を提起した宇沢弘文に今ほど注目すべき時はないでしょう。