梅田 宙

 会計の世界史  田中靖浩(著)日本経済新聞社
 会計という技術が時代の要求に合わせてどのように変化してきたのかが,物語形式でまとめられております。本書では,会計の歴史において革新が起きた国を中心に,3部構成となっております。第1部のイタリアからオランダでは,会計の基礎が誕生したことに触れております。第2部のイギリスからアメリカでは資金調達の大規模化に伴い,会計の計算や報告の仕組みの革新が論じられます。第3部のアメリカでは,管理会計の誕生とファイナンスについて扱われております。
 会計は計算手続きを扱うという印象が強いと思いますが,本書では細かな数字や複雑な専門用語はほぼ出てきません。会計の歴史に関心がある方におすすめです。
 動物絵本をめぐる冒険―動物―人間学のレッスン 矢野智司(著)勁草書房
 動物絵本という多くの人が触れたことがあるものを題材として,我々がなぜ動物絵本を読むのかということを論じております。絵本は子供を対象としておりますが,読み聞かせることを大人が担っており,年齢を問わず動物絵本を読むことに目的があることが示されております。旧石器時代に書かれたラスコーの壁画は人間自身よりも動物の絵が多く残されていたそうです。古来では人間の関心が動物に注がれてきたことがうかがえます。人間が自分は何者であるのかを,動物との差異性を追求することを通じて理解してきたということが本書では示されます。
 ヤマダ電機の暴走 立石泰則(著)草思社 
 高崎市に本社を構えるヤマダ電機の歴史がテーマです。同社の創業者であり,現在も取締役会長を務める山田昇氏に多くのスポットが当てられております。訪問販売中心の町の一電気屋さんから量販店となり,さらには系列メーカーから離脱し,多数のメーカーの商材を扱う混売店方式を採用することで拡大していきます。群馬から他県に店舗を拡大していく先には,多くの同業者他社との戦いが待っております。栃木を地盤とするコジマ電気,茨城を中心とするケーズデンキとの競争を各社の頭文字をとってYKK戦争と呼んだそうですが,この顛末についても触れられております。
 小売店の経営を学ぶ事例として面白いと思いますので,関心のある方はご一読ください。