笠見 弥生

中国はここにある  梁 鴻著),鈴木将久・河村 昌子・杉村 安幾子翻訳)みすず書房
 中国の農村の発展の裏にある矛盾にスポットをあてたノンフィクション。農民たちの飾らない言葉で語られるさまざまな出来事に、絶えず心が動かされます。日本の田舎出身の私も、不思議と懐かしくも切ない気持ちになりました。中国のことを知りたい人にも、都会と田舎の経済格差について考えたい人にも、おすすめの一冊です。
 問題だらけの女性たち ジャッキー・フレミング(著),松田青子(翻訳)河出書房新社
ダーウィン「女性は生物学的に男性より劣っている。」オリンピックの創始者クーベルタン男爵「女性がボールを投げるとみっともない、拍手をしているほうが似合う。」などなどヴィクトリア朝の女性たちに対する偏見がたくさん紹介されています。コミカルな絵と皮肉たっぷりの言葉でとてもおもしろい本ですが、現代の女性のおかれた立場を考える上でも示唆に富んでいます。
 「国語」から旅立って 温又柔(著)新曜社  

両親ともに台湾人で、自分も台湾生まれの台湾人だけれど、幼い頃から日本で暮らし、気づけばほとんど日本語しかできなくなっていた。自分の言葉を取り戻そうと中国語を習い始めるも、それは台湾の言葉とは少し違うことに気づき…。「ニサイ」と言えるようになった頃から小説家になるまで、言葉を通して母国語とは、祖国とは、を模索していく筆者の姿に、異文化の中で生きるとは何か、多文化共生とは何かを考えさせられます。