緻密に構成され、まるで数式のような幻想空間を味わえる至福の一冊。「誰かが私に言ったのだ/世界は言葉でできていると」という文章中の言葉から紡ぎだされたボルヘスの小宇宙を感じさせる基底と頂上が存在しない腸詰宇宙、という空間の住人たちの世界を描いた「遠近法」。どの短編もそれぞれ、緻密に構成され、硬質な文体で非常に数理的な世界を文字によって紡ぎ出していきます。幾何学的な世界間はある種、数式でモデル化された経済学とも共通していて、そのあたりを楽しむのもありでしょう。若いうちに出会うと小説の読み方が変わると思います。 |