小林徹

 正規の世界・非正規の世界-現代日本労働経済学の基本問題 神林 龍(著)慶應義塾大学出版会
 58回(2017年度)エコノミスト賞作。日本を代表する労働経済学者の一人である著者の集大成とも言うべき研究専門図書です。近年の日本の労働市場に存在する諸問題を幅広く学べるだけでなく、最先端の計量分析手法にも触れることが出来ます。冒頭の1,2章は歴史研究となっているので歴史研究の参考にもなります。
 多様化する日本人の働き方 阿部正浩・山本勲(著)慶應義塾大学出版会
非正規就業、女性労働、高齢者といった日本の労働市場における重要課題について扱われた研究図書。ほぼ全ての章が政府実施のパネルデータを利用した研究になるので、どのような分析課題にパネルデータを利用すればよいか、という好事例を提供しています。
 原因と結果の経済学 中室牧子・津川友介(著)ダイヤモンド社  

タイトルに経済学というワードがありますが、データサイエンティストなどデータを使うビジネス界の人にも必読と思います。就職後に役に立つ本です。「逆の因果」や「第3の変数」など、分析結果を批判的に見直すための注意点や、望ましい分析手法についても分かりやすく説明されます。とにかく分かりやすく書かれているので、データや数学に苦手意識のある人にもおススメです。

また、ゼミや研究大会などでデータ分析研究に対してコメントをしなければならない場合に、本書を読んでおけば役に立つことでしょう。