| 永田瞬
「『フィリピンパブ嬢の社会学』」 中島弘象(著)新潮社 | フィリピンパブを研究するようになった大学院生の実践レポート。偽装結婚による滞在、ブローカーによるピンはね、フィリピンの経済事情などが多角的に論じられています。本書の最大の売りは、筆者自身の恋愛経験。筆者はフィリピンパブで働く女性と恋に落ち、指導教官や両親に反対されながらも、結婚にいたります。国際関係論、女性労働論、移民労働者論などの学習へも拡げることができるお勧めの本です。
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「「その日暮らし」の人類学」 小川さやか(著)光文社 | 本書は、タンザニアの露店商や中国の違法コピー商人など、近代的な市場のルールからは逸脱する人々焦点を当てています。本書によれば、個人の信頼にもとづく取引は、インフォーマル経済を支える条件。近代化に伴って、零細事業は雇用労働に吸収される(すなわち消滅する)と説く近代化シェーマを、批判的に捉えています。文化人類学の面白さを教えてくれる好著です。 |
「男性問題から見る現代日本社会」 池谷壽夫・市川季・加野泉(著)はるか書房 | 学校、家族、セクシャリティなどの問題を男性の視点から把握しようとする本です。現代社会の窮屈さは、一面では女性の問題であると同時に、男性の問題であると捉えます。第5章「妻はなぜ、夫のがんばりを認められないのか」では、育児を手伝ってほしい、主体的に育児をしてほしい、など妻と夫の認識のズレをあざやかに整理しています。自分の生活環境を振り返りつつ、現代社会の構造的な問題に視野をのばす良書だと思いました。 |
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