三牧聖子

 反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体森本あんり(著)新潮選書

2016年大統領選挙におけるドナルド・トランプの勝利は、世界を驚かせました。なぜトランプのような破天荒な人物をアメリカの国民は選んだのか?この問いを考える上で「反知性主義」は重要なキーワードです。

 

「反知性主義」は(しばしば残念なことに、この言葉の本来の意味とは異なる意味で)昨今の日本政治や社会の分析でもよく用いられるようになりました。アメリカに限らず、広く政治に興味がある方にもお薦めの1冊です。
 子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から ブレイディみかこ(著)みすず書房
 

いまもっとも注目されているライターの一人。

 

英国で保育士として働く筆者は、英国の「地べた」の視点から同国の悪化する貧困問題を観察していきます。単なるルポに終わらず、「地べた」の視点に立った政策論も展開されます。悲惨な現実を見つめるからこそ、浮かび上がってくる希望も感じられる1冊。
 知性は死なない平成の鬱をこえて 與那覇(著)文藝春秋

躁うつ病(双極性障害)を患い、大学教員の職を辞した著者が、自身の鬱の経験とともに、その背景となった「平成」という時代を考察した著作。病気で大学の職を離れた経験から、いったんは自身も自明視していた「知性」とは何かというものを問い直していきます。

 

大学は「知」を身につける場といわれます。しかしそこで身につけようとしている「知」とはどのようなものなのでしょうか。大学に行けば「知」は得られるのでしょうか。「知性」とは何か、「平成」の終わりに自分が生きてきた「平成」という時代がどのような時代であったのか、考えてみたい方にお薦めです。