宮田剛志

 「TPPの真実」 西川公也(著)開拓社
 アメリカによる離脱のための大統領令への署名がなされたことで、事実上漂流状態に陥っているといわれているTPP協定。その一方で、TPP協定を基準にこれよりも踏み込んだ経済連携協定を求める動きが日・EU・EPAを出発点として急速に進展してしつつあるようです。では、TPP協定とは、どのようなものなのでしょうか?「TPPおばけ」とは何だったのでしょうか?本書は議員外交の視点から取りまとめられた成果です。TPP協定やその他の経済連携協定とは何かを考える端緒となります。
 「田園回帰がひらく未来岩波ブックレット950」 小田切徳美・広井良典・大江正章・藤山浩(著)岩波書店
 「地方消滅論」が声高に叫ばれています。東京への人、モノ、情報の集中がその背景にあるようです。その点で東京一極集中の強まりは否定できないように思います。しかし、他方で、この「地方消滅論」が完全に見逃しているのは、都市から農山村への人の流れ、田園回帰化傾向の顕在化です。2014年以降、こうした傾向は「閣議決定」(強調)された政策文書でも取り上げられています。本書は「背景」「本質」「諸相」「戦略」の多面的な視点から「田園回帰」について論じた成果です。その理解を進める端緒に最適のブックレットです。
 「中山間直接支払制度と農山村再生」 橋口卓也(著)筑波書房 
 2000年からスタートした中山間地域等直接支払制度は、農業・農村政策の中でも、現場を含めた各方面から評価され続けた制度です。さらに、法制化(「日本型直接支払制度」の創設)がはかられたことでその安定性・持続性が確保されました。その一方で、制度に取り組む生産者や市町村の担当者の間からは、「もう、これが限界。後継者もいないし、周りも同じような状況だ」といった悲壮な声を聞くことが少なくありません。本書は、制度の成立の経緯、事業の詳細・変遷、地域における「攻めの対応」等をトレースすることで導かれる教訓を取りまとめた成果です。農山村再生や地方創生の理解を進める端緒に最適のブックレットです。