「音楽」は偉大だ。どんなときでも「音楽」は私たちを励ましてくれるし、ときには寄り添ってくれる。甘ったれた考え方を断罪してくることもあれば、そんなことでいいのと突き放してくることもある。
ただ、音楽の力はもっと底知れない。本書は中世・日本の音楽を「政治性/権力性」「身体性」「宗教性」の3点から論じた画期的な学術書だ(内容が濃いのでスラスラ読めるものではないかもしれないが……)。
筆者の「あとがき」も読ませる文章なので、ぜひ手に取って欲しい。
1970年代、アルゼンチン。軍事独裁政権の下で3万人ともいわれる市民が、突如、拉致され、人知れず「消えて」いった。そして二度と戻ってこなかった。
この中に現在判明しているだけで17名の日系人がいた。
彼らはなぜ失踪者となったのか。本書はそこに「同定」(その人自身の自己認識に関係なく、他者がその人をどういう人かと認定する振る舞い)の政治性の問題を見出す。アルゼンチン人とハポネス(日系人)とを行き来し(あるいは行き来せざるを得なかった)彼らの足跡もたどる本書は、非常に重厚なテーマを扱いつつ、大変に読みやすい良書。ぜひ読んでもらいたい。
マンガ。それは日本が誇る文化(ただし、「日本(に特化した)文化」とは言い切れない)。過去に生み出された数々の名作を読むと、時代(時間)を超えて胸が熱くなり、興奮することもしばしば。
しかし、そんな作品の中にも「差別」表現が入り込んでいたら……。
あるいは、読者が気づかないところで「差別」と闘っていたら……。
漫画家個人の問題ではなく、その作品が生み出された時代背景も踏まえて考察する意欲作。執筆者3名がそれぞれ異なる視点から迫っている点も◎。