八木 はるな

 LGBTを読みとくーークィア・スタディーズ入門  森山至貴(著)筑摩書房
 本書はまず「私には偏見がない」と思うこと自体の危険性を指摘しています。そして昨今よく聞く「LGBT」という言葉の意味や歴史的背景を、またそれとは異なる「クィア」という言葉についても、平易な言葉で丁寧に解説していきます。クィア・スタディーズとはどんな学問か、同性婚やパートナーシップ制度の争点は何か等、本書を読めば多くの知識が得られるでしょう。セクシュアリティについて考えるには、最良にして必読の入門書でしょう。
 はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで  石田仁(著)ナツメ社
 今回は、LGBT特集にします。セクシュアリティの基本を学びたいけれど、上記の『LGBTを読み解く』がまだ少し難しく感じられる方には、本書がお薦めです。図説をうまく使って、実際の状況や会話をもとに、用語・概念についての知識や歴史的背景、言葉の使い方などを解説しています。セクシュアリティについて悩んだ時、混乱した時にいつでも手にとって確認・学習できる、平易にして良質の実用書です。
 孽子 白先勇(著)陳正(訳)国書刊行会
 2019年5月、台湾ではついに同性婚が合法化されました。そんな台湾で、性的マイノリティ運動を時に先導し、後押ししてきたのが文学でした。1990年代から今日まで、台湾では実に多くの性的マイノリティ文学が創作されてきましたが、1983年に出版された本書は、その先駆けとなった金字塔的作品です。主人公は、1970年代の台北に生きたゲイの少年たち。彼らそれぞれの葛藤や欲望が丁寧に描かれており、笑いも涙も誘われます。物語を楽しめば自然と台湾や中国の歴史・文化を知ることができるでしょう。訳書であることを感じさせない見事な邦訳も魅力です。