鈴木 耕太郎

 介護民俗学という希望――「すまいるほーむ」の物語  六車由美(著)新潮社
 大学教員から老人ホームの介護職員へと転職した筆者が語る「希望」とは――。構えず、自然に身近にいる先人たち(=お年寄り)のことばに耳を傾ける。すると目の前に広がる多忙で厳しい介護現場は、フィールドワークの場へと様変わりする。
 しかし、介護は研究ではない、営みなのだ。聞きたいことを聞くのではなく、相手が話したいことを聞く。敬意と新鮮な驚きをもって聞くことが重要なのだ。
 フィールドワークを志す方にはぜひ読んでもらいたい一冊。
 神話・伝承学への招待 斎藤英喜(編)思文閣出版
 「神話」「伝説」「昔話」、これまで似ているようで異なるものとして扱われてきたこれらを、「神話・伝承学」の名のもとに改めて総合的に検討しなおそうという意欲的な一冊。
 とはいえ、ガチガチの研究書ではなく、よりわかりやすく魅力的に「神話」「伝説」「昔話」を論じている。11の論文、7つの学術コラムで構成されているので、興味のあるところから読んでいくのもOK。こうした分野に興味のある方は必読の一冊。
 荒ぶるスサノヲ、七変化 斎藤英喜(著)吉川弘文館
 スサノヲノミコト。日本神話に登場する由緒正しき神にして……とんでもなく破天荒!
 神としての職務を放棄して、亡き母を思い大声で泣いてばかりいるかと思えば、とんでもない迷惑行為を次々起こして天から追放されてみたり、天から地上に降り立ったらヤマタノオロチを退治してみたり、かと思えば冥界の王となって娘の恋人に嫌がらせしてみたり……。こんなスサノヲという神が、人々にどのような神として受容されていたかを説く一冊。学術書ながら大変読みやすいのでオススメです。