高松 正毅

「進化する勉強法漢字学習から算数、英語、プログラミングまで  竹内龍人著)誠文堂新光社
 本書は、認知心理学の実験をもとに(evidence-based)、誰にでも通用する効果的な勉強法をまとめたものである。勉強法の類いはYouTubeにも溢れているが、真に役立つものは少ない。誰もが自らの成功体験をもとに語り、そこにウソはないのであろうが、必ずしも誰にでも通用するとはかぎらない。
 実験によれば、集中学習と分散学習なら、後者の方が定着度が高い。つまり、復習はすぐするのではなく、適当な間隔を置いた方が良い(分散効果)。また、教科書や参考書を読んでひたすら憶えようとするより、問題集を解いて思い出そうとする方が良い(テスト効果)。
教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則 
  ダニエル・T.ウィリンガム(著)恒川正志(訳)東洋館出版社新社
 現役の教師と教師を目指している人の必読書である。
 「よく考えるには知識が必要である」。というのは「論理的に考える、問題を解くといった批判的思考過程そのものが、長期記憶に保持された事実的な知識と密接に結びついているから」である(p.58
)。したがって、「情報を記憶しておく必要はない」と考えるのは誤りである。つまり、読解力には語彙力だけではなく、背景知識が重要なのだ。ただし、単語帳を憶えるような学習にとどまっていてはダメで、知識は概念化され、事柄が相互に関連づけられるようになって初めて生きる。
 原著は2009年刊、著者は認知心理学者で、この書もまたevidence-based である。
 ファクトフルネス10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 
 ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド、上杉 周作、関 美和(著)日経BP  

2001年に、『世界がもし100人の村だったら』が出版され、2009年には、池上彰が『日本がもし100人の村だったら』を出した(両書ともマガジンハウス刊)。要は、データにもとづき正しく現状を認識し、誤った思い込みや決めつけから解放されようということである。
 
本書に書かれていることは至極真っ当で、ビルゲイツのように希望者に配るほどのものではないようにも感じられるが、家族で書いているので、とにかく読みやすい。
 世界が直面している諸問題への入口として、普段本を読まない人向けである。