梅田 宙

 帳簿の世界史 ジェイコブ・ソール(著)文藝春秋

王政や国家レベルの経済で会計情報が大きな役割を果たしてきたことが歴史的に考察されています。考察の範囲は広く,古代ローマ文明の時代からリーマン・ショックまで多岐にわたります。

著者は会計の歴史を単なる数字の増減の話でなく,人間と政治の物語であるとまとめております。数字に感情はありませんが,数字を使う人間は感情の生き物です。会計情報によって人々がどのような影響を受けてきたのかに関心がある方におすすめです。
会計天国 青木寿幸・竹内謙礼(著)PHP文庫 
  事故死した経営コンサルタントが,天使から生き返る条件として「会計の知識を活用して問題を抱えた5つの会社を救う」というお題を与えられます。突拍子もない物語ですが,内容はしっかりしております。各社の課題を資金管理,損益分岐点分析や業績評価指標の設定などといった管理会計手法を用いて解決していきます。文章も読みやすく書かれており,会計情報をいかに経営に活用できるのかに関心のある方におすすめです。
ヒューマン:なぜヒトは人間になれたのか NHKスペシャル取材班(著)角川書店
  人類の心の進化をたどるドキュメンタリーです。本書では,人間とは何か,人間らしさとは何かという問いを心に求め,学際的な調査例に基づいて人類の歴史を探求しています。協力する人,投げる人,耕す人,交換する人という章で構成されており,各章では環境の変化や人間が生み出した発明によって,人間がどのような心を獲得していったのかが論じられております。過去から受け継いできた人類の特性を知ることは,現代を生きる上でも示唆に富むと思います。