宮田 剛志

 農山村からの地方創生 小田切徳美・尾原浩子 (著)筑波書房

「地方創生消滅!」

 ある大手新聞記者のつぶやきです。ほとんどの農山村の将来を「消滅」と予測する「地方消滅論」をきっかけにして、鳴り物入りで地方創生が発足しました。ところが、国政の中ではいつのまにかその位置付けが弱くなり、「地方」ではなく「地方創生」が先に消滅しつつある状況が生じています。皮肉のようです。

 しかし、地方創生という政策の次元ではそうかもしれませんが、農山村の各地で営々と取り組まれている「地域づくり」の動きはまったく異なります。急ぎすぎた地方創生が、従来からの取り組みに水を差したところもあれば、逆に地域の内発的発展を応援することに繋がった例もあります(以上、「はしがき」より引用)。

 そこで本書では、政策レベルの地方創生の動きを、農山村の現場における地域づくりの動きとの関係でそれを評価し、位置付けが試みられています。地方創生や農山村再生の理解を進める端緒に最適で、かつ、最新の図書の1冊です。
 内発的農村発展論 理論と実践 小田切徳美・橋口卓也(著)農林統計出版

“内発的発展”-いまや、地域を語るときに欠かせない言葉になっているようです。この言葉が世に登場したのは1975年といわれており、それからすでに40年以上を経ています。しかし、その語感のよさからか、むしろそれが当然視され、逆にその内容が豊富化されることは多くはなかったようです。あたかも。「民主的」「総合的」という時代のキーワードがそうであったように、「内発的」は学術用語としては迷走しつつありました。それは、欧州でも同様だったようです(以上、「はしがき」より引用)。

 そこで、本書では、以上の点を踏まえ、主として英国・欧州での議論を念頭とし、わが国の内発的な農村発展の道を探るための学際的な共同研究の成果をまとめられたものです。内発的発展論の理解を進める端緒に最適で、かつ、最新の図書の1冊です。
縮小ニッポンの衝撃 NHKスペシャル取材班(著)講談社
 (近)未来の日本が直面するであろう「人口減少」「高齢化」、そしてそれに伴う「財政難」。このような困難な課題にいち早く早く直面している自治体が2006年に353億円の赤字を抱えて「財政破綻」した北海道のA市です。A市では、「ミッションインポッシブル」と揶揄される過酷な「借金の返済」に追われ、住民サービスの前例のない切り詰めが余儀なくされているようです。上下水道、ゴミ収集、学校、公共住宅、公民館や図書館などこれまで当たり前に提供されてきた公的サービスがある日突然停止する。A市では現実のものとなっているようです。「人口減少」社会の「ひずみ」がいちはやく発現したのでは?と考えられています。どこに住んでいても一定以上のサービスの提供を受けるとは、憲法で守られた私たちの権利ではないでしょうか。しかし、この当たり前のことが実現困難になってくる?2025年には東京も人口減少に転じるのでは?という予測もあります(以上、「プロローグ」より引用。一部改変)。「人口減少」「高齢化」「財政難」等々の「課題先進国となった日本」の現実の「一断面」の理解の端緒として「考えさせられる1冊」です。