鈴木耕太郎

 異神――中世日本の秘教的世界 山本ひろ子(著)平凡社

日本における中世期――それは“信仰の時代”でもあった。

一般的に、現代の日本に生きる私たちが知っている信仰の対象とは、「神様」と「仏様」くらい。でも、中世期の日本では「神様」でも「仏様」でもない/「神様」でも「仏様」でもある、ナニモノとも言えない存在がしばしば信仰の対象となっていた。筆者が「異神」と呼ぶそれらの、怪しくも、ダイナミックな信仰世界を明らかにする1冊。内容の非情に濃い学術書なので、読み進めるのは正直、しんどい……でも、どこか不思議な小説を読んでいる気分にさせてくれる。怖い物見たさに、一度手に取ってみてはいかが?
 増補 陰陽道の神々 斎藤英喜(著)思文閣出版

まず大前提! 陰陽道は、今でいう「科学」。宮廷に仕える陰陽師たちは、科学者国家公務員。彼らは星の動きを観察、記録し、正確な暦(カレンダー)を作り、また正確な時間を知らせる役割を果たしていたのだ。

でも、現代人のイメージする陰陽道/陰陽師といえば、妖怪を退治したり、あるいは妖怪を部下にしてみたり、死んだ人を蘇らせたり、呪文を唱えて呪ってみたり、空を飛んでみたり――いったい、なんでこうなった?

実は、陰陽道は科学でありながら、今でいう「宗教」的要素も多分にあり、様々なカミサマが信仰されていたのである。そんな陰陽道のカミサマにスポットを当てた1冊。比較的読みやすいので、怪しい世界がお好きな方にはおすすめ!
 京都まちかど遺産めぐり 千田稔ほか(著) ナカニシヤ出版 

古都・京都。1000年以上、日本の首都であったこの地は、国内・国外問わず多くの人が古き伝統・文化を感じるために訪れている――でも、スポットライトを浴びているのは、ごくごくごく一部の寺社仏閣・観光地だけ!

京都の町を見渡せば、あちらこちらに歴史を物語るモノがたくさんある。でも、今や誰も見向きもしない。現地の人ですら知らない。ましてガイドブックに載っているわけもない。そんなモノを「まちかど遺産」と命名して、誰も知らないマニアックな京都の歴史をひもといていく。1項目4ページと読みやすく、写真も図版もふんだんに使われている。「歴史」や「文化」、または「観光(地)」に興味のある方々には、ぜひ手にとってもらいたい1冊。