| 加藤 健太2018
「勉強の哲学」千葉雅也(著)文藝春秋 | 本書の帯によれば、「東大・京大でいま1番読まれている本!」らしい。だからというわけではないけれども、大学生に読んでもらいたい本である。“勉強って何”という問いに対し、“目からウロコ”の説明をしているだけでなく、ぼくが『イントロ』(2017年版と2018年版)のあちこちで訴えた、経済学会主催の「学生懸賞論文」に挑戦するうえで、とても有用な内容を含むからである。もちろん、論文を書くためでなくても、大学で学問することの意義を考えるヒントに溢れているところ、そして、「哲学」の香りが強いにもかかわらず、スーッと頭に入ってくる読みやすさ。こうした点もおススメする理由である。ぜひ手にとってほしいと思う。 |
「「決め方」の経済学」 坂井豊貴(著)ダイヤモンド社 | どのような決め方が、いかなる意味で望ましいのか。本書はこの問題をとても分かりやすく解説してくれる。多数決は他の決め方に比べて望ましいとはいえないけれども、ある条件を満たすと途端に輝きを増す。また、どうでもいいことを決めるときには望ましい方法となる。それはなぜか? 著者は、ときにアメリカの大統領選などの具体的史実、ときに小説や戯曲の内容を織り交ぜながら説明している。 この本を読んで、オモシロいと感じたひとは、経済学の“センス”があるかもしれない。タイトルにあるとおり、経済学の話だからである。 |
「セブン‐イレブン 金の法則」 吉岡秀子(著)朝日新書 | コンビニ業界は、セブン‐イレブン(セブン)、ローソン、ファミリーマートの3社がしのぎを削る競争的な寡占市場である。その中にあって、トップランナーであり続けるセブンの魅力の1つが日配品(おにぎりやお弁当)やファストフードのおいしさにあることはよく知られている。 本書は、セブンカフェやおにぎり、麺、スイーツ、サンドイッチ、本・雑誌などを事例にして、現場で働くひとに光を当てながら、商品開発の実態をリポートしている。そこで紹介されるエピソードの数々はホントにオモシロい。 たとえば、明太子のおにぎり。「工場では崩れやすい明太子を、ひとつひとつ手でごはんの中に詰めている」らしい。21世紀に、である。 古屋一樹社長は巻末のインタビューで「お客様の変化の半歩前をゆく策を打ち、自ら変わっていかなければなりません」と発言している。セブンの「半歩前をゆく策」を知りたいひとにはぜひ手にとってもらいたい一冊である。 |
「現代経済学」 瀧澤弘和(著)中央公論新社 | タイトルは地味(?)だけれども、内容はとても魅力的な経済学史の本である。「学史」といっても、行動経済学や実験経済学など最近流行の新しい経済理論を主なトピックにしており、従来の経済学史のテキストよりも格段にオモシロい。 本書が取り上げる経済理論はけっして簡単ではないけれども、哲学や心理学にも及ぶ著者の幅広い知見と深い洞察力、そしてかみ砕いた表現によって、かなりわかりやすく解説されている。現代の経済学が「人間」をどのように考え、「人間社会」をどのように捉えようとしているのか、そして、経済学はいかなる学問領域と交流しながら、どこに向おうとしているのか。本書はその「見取り図」を提供してくれる。 |
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